2021/3/9

2021/3/9
ふつうの暮らしとファンタジー



テノナル工芸百職さんでの展示会、大きくピックアップ戴きまして、大変恐縮です。

物を売る事と、流行り廃りは避けられない関係にあります。
手仕事は近年、その恩恵も煽りも、多く影響を受けていたように思うのですが、その中で「ふつう」という言葉も多く使われ、消費されてきたように思います。

我々(と、勝手にまとめてしまいますが)としては、かつての暮らしの中に当然としてあったもの。
 そして、現在の生活において幸せに、心豊かに、社会や環境と調和するような道具を、日常の暮らしの中に取り入れる事を「ふつう」としているのだと思います。

ただ正直、後者の「ふつう」は一部理想、というか、言ってしまうとキレイ事みたいな所もあると思います。

 そもそも、美しい、というのは理想に近いという言葉なのだと思います。
作り手のみが触れられる美の世界というのは、サンクチュアリに近い感触があって、ファンタジー染みた面もあると思います。(それなのに、作り手は実際に手を伸ばして触れてしまえる所があまりに恐ろしいのだけれど)

 ネットなんかで「丁寧な暮らし」による強迫観念から離脱しよう!インスタントで何が悪い!というような動きもあって、そうですよね~、とも思っています。それはそう思います。

けれども、こう言った道具の作り手の皆さんは、そういうキレイ事を地で行ってしまう(行けてしまう)凄い人達で、実際に実現してしまう人達で、そこがかっこいい所だと思います。
 ただのノーマル、というよりは、理想像が多分に含まれていたから、流行になった所もあると思うんですよね。でも、夢も理想も描けなくなったら、そんなに寂しいことはない。人を人たらしめるのは、心の豊かさだと思うし、こういう営みの先に健康で文化的な生活があるのだと思うので、これからもガツガツ、真顔で夢を語っていこうと思います。

 そして、そんな夢を叶えてくれる展示会、本当に嬉しく思っています。

何卒、よろしくお願い申し上げます。

以下、テノナル工藝百職さんのインスタグラムよりー


#Repost
 @tenonaru_kougeihyakushoku


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Kitanocho, Chuo-ku










【3月の展覧会のお知らせ】



長文です。



フライヤーに載せた文章はとっても堅苦しくなっちゃいましたが要は感動したんです。



生きる上でもまだ油断ならない状況で、ものづくりを続けていくのも人によっては大変なわけで、それでも手仕事の力を信じてこつこつとやれることをやっていきたいという思いに心動かされました。












(展覧会フライヤー掲載文)





中津箒のつくり手の吉田慎司さんが、昨年8月に「ふつうの研究」というクラフト冊子を上梓された。



特に、最後の章の終わりの文章が、ものづくりの上での清清しい意思表明と一種のささやかな祈りのようなものを感じて印象的だった。





『イメージの固定化された振り子は、必ず揺り戻しが返ってくる。けれど、ニュートラルで、地域、歴史的に無理のない、普遍的な視点や価値観を得られるのであれば、それは時代や流行に踊らされることの無い、芯のある価値観になるのではないか。(中略)全てが歴史の中の誤差に過ぎないと、ニヒルに構える事は簡単ですが、一度きりの限られた人生の中、できる限り揺るぎない、変わらない、できればスパンの長い価値を作り、そのような場所に立脚したい。人の暮らしや生き方に光を照らす仕事がしたいと思います。そして、確かな手触りを頼りに進みながら「ふつう」の少し先の景色をのぞいてみたいと思っています。』                              ―吉田慎司「ふつうの研究」より抜粋





「ふつう」という言葉やイメージが流行りに乗せられたこともあった。



今ではひとくくりに集約するのは難しいと思われる「ふつう」という概念だが長い時間をかけて多くが蓄積され、風化や自然淘汰を繰り返す内に残るものを、もしかしたら「ふつう」と呼んでもいいのかもしれない。



今、様々な状況や環境が変わり揺らぎ、世界のどこにいたとしても大変なことがある中では、改めて揺るがない足もとや身近なものの存在の大切さにしみじみする。



落ち着かない世の風に吹かれているからこそ、手の中に収まるようなつつましやかなもの、腰を据え地に足の着いた仕事、自然との結びつきを感じさせる手仕事から受け取るものはきっと大きい。



今まで語られてきた「ふつう」から歩みを進め、ちょっと先にあるものもまた見えてくる気がする。



今回の展覧会は私が思う、身近な自然や地域、小さな規模の中でしっかりと根を張りすくすくとご自身のものづくりの樹を育んでいかれている三人のつくり手の皆さんによるものです。









3月の展覧会





ふつうの 少し先の 景色



2021/3/20(土) – 29(月)



12:00-18:00





金城 貴史|木の匙 
@kinosaji_kinjo


橋本 晶子|すず竹の籠、ざる 
@hashimotoakikoworks


吉田 慎司|中津箒 
@yoshida_shinji_




初日のみ事前予約制



会期中休 3/23(火)、24(水)



最終日3/29(月)のみ16:30終了





○初日のみ事前予約としていますが2日目以降も混雑が見込まれる場合は変更する可能性もあります(予約詳細は追って告知します)





#金城貴史
#木工#木の匙#吉田慎司#箒#中津箒#橋本晶子#すず竹細工#すず竹#craft#暮らしの道具#手仕事#テノナル工藝百職

2020/11/7

2020/11/7

「ふつう」
の研究


 ごく一部の方に大変反響いただいております論文(誠にありがとうございます)
 第2弾を作成していました。
 前回、手動でお送りしていたら、地味に手間とコストがかかったので(笑)
送料と封筒分、
BASEからも注文できるようにしました。
 https://gatangoton.base.shop/items/35858923

流行だろうが感染症だろうが不況だろうが、腰を据えて作り続ける、というのは変わらないんですが、節目節目に、可視化できるアンカーを打つような、気持ちで作成しています。




———





昨年制作した冊子液状化する工芸史は、「クラフト」と言われる言葉の歴史や、ジャンル分けがどのように生まれてきたか調べたものでした。その中で、近年まで大きな盛り上がりを見せていた、そして、私自身が仕事を始めた頃に引き受ける事になった「暮らし系」ブームの中でも「ふつう」ブームについて調べようとしたものです。



「ふつうの暮らし」という文言は、辟易するほど消費された言葉ですが、皆が普通を求める事は、日常が、何かにおいて異常である事ですし、普通が消費される、という事も、通常の意味においては尋常な事ではありません。当初は、暮らし系雑誌の中でも影響力の大きかった「クウネル」について調べる予定でしたが、実はクウネル自身が何か発していたというよりは、そこまでの経緯や、関係自体に力があったと考え、「ふつう」を巡る考えをまとめる事となりました。



雑誌ブームや暮らしブームは殆んど収束し、新型の感染症などの影響で、クラフトフェアのような方式にも、ある程度のピリオドが打たれたように感じています。ある区切りには、その意味を清算していく事で次の段階に行くことができると思い、編んだ冊子です。



視点や展望を開拓するための批評というよりは、できるだけ客観的に、出来事を俯瞰しようとした、調べものに近い内容になっていると思います。



何かと落ち着きのない世の中ではありますが、だからこそ、地に足の着いたもの作りが求められると、確信しています。

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イルドーノさんでの展示会、はじまっています!


「伝統の日常づかい展」二人展



11.7(sat)〜15(sun)



11:00〜18:00



イルドーノ札幌店

2020/9/23


2020/9/23



「いまできること」



出張でお会いできた皆様、ありがとうございました。
好きなこと、好きなもの、好きな人にたくさんお会いできて、幸せな時間を過ごせました。

工芸や手仕事については、会うたび会うたび、色んな人と語り尽くしました。展示会やトークイベントも、上々でした!
おそらく、作り手としてなすべきことは変わらない。ハデなお祭りが出来ないなら、ささやかに、確実に手を繋げる人と、確かな歩みを進めていく。という事は何も変わらないし、むしろもっと重要になる。という事を何度も話していました。

 でも久しぶりの友人や仕事仲間に会うと、どうしてもコロナの話をしてしまいますね。というのは世間話ではなくて、やっぱりどうしているか。変わりないか、心配になってしまうから。困っている人も少なからずいて、情報交換も、相手の助けになることがあるから必要な様にも思う。
そして、楽しい中でも、何だか出張の中で引きずる気持ちがあった…のは、日本(世界と言うべきか)全体において、根本的な安心感が失われているからだと思いました。どんな人も、うっすらと(時に強大な)不安を抱えているから。ばんざーい!って手を上げようとしても、てっぺんの少し手前で止まってしまう気がする。
 美術や工芸や詩の力で、人の暮らしや生き方が幸せになったり、豊かにする事が出来ると考えています。それは変わらないし、変える事もない。ただそれが、幸せをご飯みたいに、もりっ、とお椀に盛る事が出来る力だとしたら、足元が落ち着いていない状態。どうしても、お椀に穴が空いている。という感じがするんですよね。
漏れても漏れても、上から盛りっと覆い隠す事は出来るかも知れない。けれど、穴が空いている事実は変えられない。本当の解決じゃなくて、ストレスへの反応を減らすコーピングや対症療法しか出来ないのでは?と思ったりもする。

 でも、そればかりじゃない。という事も強く思い返しました。それは自分の考える限り2つあって…

 1つは、工芸や芸術家全般、もしかしたら仕事をしている人、人と繋がる人全てに言えると思うんだけど、まずは自分自身が、心から幸せに暮らす事。表現する事は、人に影響を与えて、背中を見せてしまうものだから。心配や不安があっても、曇りなく、幸せな仕事や生活を過ごす事は、見ている人が、心から楽しい!と思う事に繋がると思いました。
幸い、僕たちは人生を賭けて夢中でやりたい事、突っ走りたいものに出会っていて、落ち込んでいる暇なんか無い人達だから。その在り方を共有するだけでも、吹き飛ばせる雲がある様に思う。
 もう1つは、仕事の在り方を見せる事、とも思いました。もちろん、色々な仕事があって、リスクを避けられない仕事も多いように思うんだけど、僕たちは比較的回避できたり、組み立て直しやすい場所にいるように思う。正直、こんな仕事で札幌に住んでいると、あんまり心配する場面もないというか…ほとんど家で作業をしているし、自炊や自家製の調味料や漬物も多いので、元々週一回しか買い物にも行かない。(しかもオープンエアーの八百屋さん)オンラインで売ったり、数を捌くのではなく、限られた人に大切に渡す。というギアチェンジも、大きな会社に比べたら動きやすくて、どうにかやっている人が多い気がします。

 もちろん、エッセンシャルワーカーと言われる人も多いんだけど、どうにかして、考えて、動いて、幸せに、安心に、精一杯仕事を出来るように進んで行けたら、それもやっぱり誰かの励ましになる気がするんだよね。そういう仕事や大変な職種に関しては、みんなで考えて、動いて、可能な限りハードを作り替えていかないなと思っています。当座の支援や付け焼き刃じゃなくて、本当に根本から動かせるなら、時間もお金も、いくらでも差し出したいと思うし、できる事はやっていきたい。

久々に行った東京は何だか息苦しい感じもあったけれど、そうやって、考える事にも新たに触れられた気がする。踏まえて、やることも本質も変わらないけれど、少し軸足をずらして制作しようと目論んでいます。(予定ぱつぱつなんで、どこまでずらせるか。って感じもありますが…(笑)

がんばるぞー!ってなりました。
(これも皆さんにエネルギーをもらったお陰です。ありがとうございます!)


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工房からの風、今年は通常開催は無いのですが、今できること、今年ならではの企画が開催されます。今年も、風人としてお手伝いさせて戴きます。

工房からのそよ風

10月17日土曜日(1日のみ)  雨天の場合18日日曜日

(10月16日金曜日18時に発表)

10時から15時

庭園内来場者120名様定員制


こちらの詳細は、追って
このブログからお知らせいたします。

開園時は予約制とさせていただく予定です。

ご予約は10月12日月曜日から、こちらも詳細は後日発表いたします。

 +++

「工房からの風」の会場の一部には庭があります。
「「ニッケ鎮守の杜」と名付けられた空間には、「手仕事の庭」という花壇もあり、四季を通じて自然に即した手入れを続けています。

「工房からのそよ風」では、秋の庭をお楽しみいただくとともに、この庭にゆかりのある方々にご協力をいただいて、皆様をお迎えいたします。

 風人ブース

br>アトリエ倭 木工 ワークショップ・作品販売
 RIRI TEXTILE 染織 制作公開・作品販売

磯敦子+森友見子 綿+再生紙 制作公開・ワークショップ・作品販売

大野七実+小泉すなお 陶芸 制作公開・作品販売(小泉すなおさんのみ)
 hyakka 木工 制作公開・作品販売

Anima uni+CHIAKI KAWASAKI 金属 制作公開・作品販売

吉田慎司 ほうき 制作公開・作品販売

庭人ブース
庭の恵み(ミックスハーブ・ミックスシード・ミニ盆栽など)の販売

※ブーケ・生花の販売はありません。

 作り手ブース

am  帆布と革のバッグ

きたのまりこ 金属装身具

曽田伸子 ガラス

比呂 陶芸

町田裕也 陶芸


今年度出展予定作家のうち千葉、東京、神奈川、埼玉、茨城在住の「工房からの風」出展経験作家による展示販売を行います。

感染症予防を重視し、広範囲の人的移動を避け、展開に混乱なく安心して協働できる出展作家による出展です。

 

日々懸命に、生きることに向かい合っている作家さん達の結晶のような展示会です。

そんな場所で、今年もお手伝い出来る事が本当に嬉しいです。

皆様のご来場、お待ちしております!

展示のお知らせ と思うこと

 皆さま、お元気にお過ごしでしょうか。
展示会の中止や延期など、苦労されている方も多いと思うのですが、こちらはおかげさまで、変わらず忙しくさせて戴いていました。
 芸術・美術・工芸は不要不急とされてしまうのではありますが、人が人らしく、豊かにあるための必需品だとは思います。
これまで、多くの非常時に手仕事はどうあるべきか。何をするべきか、しないべきか、問われる機会がありましたが、やはり為すべきことは変わらない様に思います。

 箒は(その他の工芸品も勿論ですが)多くの語られ方をされてきました。
環境に配慮した商品として。地域に根付いた、伝統的な手仕事として。現在の暮らしに寄り添う道具として。昔ながらの生活様式や思想を継承するものとして。
どれも間違いではありませんし、特にこういうご時世には、人類が古代から戦ってきた公衆衛生やそのための慣習、信仰などの語り方もできるように思います。(掃除は仏教でも重要な位置づけにありますし、葬儀の中で多く使われてきた歴史は、払う、清めるという精神的な意味と同時に、感染症や衛生という言葉が生まれる前から実利を伴った慣習だったのだと思います。)でも、それだけとりあげるのは違う気がする。

 営業的には、「~を解決するのための箒!」と、分かりやすく切り取って紹介する方が訴求力があるのは確かですが、これらを文化として捉えたときに、切り取る事はその他を切り落とすこと。物事を矮小化する事と思っています。ここは敢えて、美術工芸全般、豊かな世界への道しるべとして、できるだけ風呂敷を広げて携わりたいと思っています。
 
 これまでずっと考えてきたこと、いま考えていることは、

思いを巡らすこと。
向こう側に触れること。

大きなシステムや、多くの労働力を利用しなくても、美しいものは近くにある。どこで、誰が、どのように、どのような思いで作り、作られていくのか。かつては当たり前だった事が取り戻せれば、不必要な誹謗中傷や、悲しい不均衡、すれ違いは起こらないようにも思っています。幸せな世の中に近づくと信じています。(柳宗悦も、社会の構造の話は散々してたけどね)

土地土地の培ってきた慣習や歴史や背景が、自然な生き方、在り方を教えてくれる。環境、流通、消費、生活様式など、道具の向こうにあるものに気持ちを寄せ、鑑賞や感性に耐える力のある工芸は、道具がどこから来て、どのように使われ、どう進んでいくべきかを考えさせてくれるように思います。

まだまだ自粛がちのイベントで、大手を振っておいでください!とは言えないような状況もありますが・・・ウェブショップもありますし、そもそも多く作れるものでもないので、気軽な気持ちで、無理なく、手に取って戴ける方にご来場戴ければ嬉しいです。
必要とされる方に届いてくれると信じて。

「器と工藝 コハルアン」
https://www.room-j.jp/
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『美しい初夏の私』
2020年6月18日(木)~7月3日(金) *最終日は17:00まで
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■ 出品作家
□ 仕草 佐渡勝行(染色 手ぬぐいと布小物)
□ 吉田慎司(中津箒 小帚)
□ 大内学(ガラス)
□ 川合孝知(九谷色絵 小皿 : 6/20より展示)
□ 矢口桂司(陶 豆皿)
□ 長戸製陶所(砥部焼 そば猪口等)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
会期中はソーシャルディスタンスを保つため、店内滞在人数を五名以内とさせていただきます。
時間帯によっては、ご入店をお待ちいただく可能性がありますことをご了承くださいませ。
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※7月4日-12日、石神井公園でも展示会予定です。(詳細まもなくUPします!)

展示会のお知らせ・最近考えていること

色々とせわしない世の中ですが、四月は展覧会が2つあります!

こちらは、札幌在住の、山根広充さんとの2人展。家具や、雑貨、自然派ワインなども販売する、イル・ドーノさん千歳店での展示会です。

「伝統の日常づかい展」
日時:4/18(土)〜4/26(日)
時間:11時〜18時 (21日はお休み)
場所:イル・ドーノ千歳店(北海道)
※25日、ワークショップ

「吉田慎司の手しごと展」
日時:4/2(火)〜4/29(水)
時間:11時〜17時※水曜定休・29は営業
場所:ギャラリーそら(鳥取)

いつもお世話になっている、鳥取のギャラリーそらさんです。商店街の中にあって、すぐ近くに民藝館もあって、楽しいです。なんと、7周年記念展…!
ありがとうございます。

作ったものの意味っていうのは手に取った人それぞれが好きに考えてくれたらいいんだけど、あんまり色々な読み解き方があるので、出来るだけ、何を考えているか発信しようと思っています。

・最近は、時空について考えていました。
(すごく、中二っぽくて悪くない)
インターネットや情報が発達して、場所や時間の壁がなくなると言われて久しいけれど、本当に実感しています。

本、映画、音楽。新しいもの古いもの、遠くのものが本当に簡単に手に入る。

ある本について気になったら、検索して作者や図書館や古本屋の在庫が分かり、その背景や解説、論文も調べられて、手に入らないものは国会図書館でコピーをお願いしたり出来る。海の向こうのものも手に入る。

映画も、クレジットや過去の作品、キャストなど、ネットがなかった頃の調べ方は途方もなかったろう…と思うし、音楽も、2000年代生まれの方が80’sにめちゃめちゃ詳しい、なんて普通の(まぁそれなりのディガーではある訳だが)事だな、なんて思う。

・自由で、恐怖でもある
それは悪いことばかりではないんだけど、作り手には手強い。隣り合う過去のクラシックと至近距離で並べられて、それでも新しいものを…!と、渡り合っていかないと行けないからだ。
道具は、半消耗品でもあるのでまだ良いけれど、プロダクトなんかも含め、色々なものやスタイルと渡り合っていかないといけない。(もちろん、芸術活動としてやっている人が新しい作品を作ることに疑いの余地はないのだけれど、自分も、長い時間引きこもって、ネットで岩波文庫を注文して端から全部読んだらおもしろいだろうなー、とか、ヌーヴェルヴァーグとかATGの映画をコンプリートしたい、みたいに夢想したりする。)

・寄る辺がなくなってしまう
そこで反面、数年前から文脈や体系について考えている。そういうクラシックに紐づく体系がある事は、いい事もあったし、悪い事もあったのだと思う。

何がしかの文脈や体系に分けるというのは、手仕事で言うとクラフト、とか、暮らし系、とか民藝、と言う事だったり、音楽でもジャンル分けをしたり、単体で聴くんじゃなくてアルバム単位で鑑賞したり、何かのランキング・流行として捉えたり…という事が、無くなったことは全くないんだけど、時空がボーダーレスになる事でバラバラで受け取られることが増えたんじゃないかなー、と思う。寄る辺がなくなってしまった。とも思う。

・船団に守られない
ある強い文脈で語られる、というのは、護送船団に似ている気がする。あそこに出れば有名人!とか、あそこの仲間になれば安泰!とか(でも決してそんな事はない。)
それは結集した力、とも言えるし、しがらみや暴力になる事もあるように思う。
肌感覚で言ってしまっているけれど、かつての登竜門や狭き門、を通らなくても、やり方が無数にあるっていうのは、どの芸術分野でも言えると思っている。

・改めての量より質
これは東京を離れたこととも繋がるんだけど、頑張って大きな樹や場所にしがみついても仕方ない。と思っている。たぶん、その幹は想像より弱くなっているし、周りにたくさんの魅力的な林あって、ただ大きいという事の意味が薄くなってしまった。

大きさで選べないなら全部好み?と言われるとあまりに心許ない。人生の殆んどの時間をここに投げ打つ訳だから、全部趣味嗜好の違いで片付けられてしまうと困る。おそらく「質の良い」ものが必ずあるはずだ。
ここで文脈というのはすごく役に立つ。これはこういう成り立ちでこういう育ち方で、こういう事に向いた樹です。と、説明できる。要は大きさ=サイズや量ではなくて、質の問題(もう逆に恥ずかしくもないくらいに使い古されている)になってくる。
規模や話題性、見た目ですぐ分からない質をどう証明するか?というと、信用の問題でしかない。どこの先生が言っていたから。有名人が言っていたから。テレビで言っていたから。それが全てでもない事がすっかり分かってしまった。最終的に、一番信用できるのは、近くの知り合いや仲間だな。と思う。(これもまた、あまりに幼稚くさい言い方である…)

・そこで、これからやるべき事と意義
昔から、街の箒屋さんっていいよなー、と思う。知り合いのレベルの人は信用できるし、文化が根付いているという事で、背景や未来に確実に繋がっているという事だと思う。知り合いのものだから良いもの。というのはすごく嫌だけど、知り合いだからこういう欠点はあっても嘘はついていない。の方が安心できる。
ものの作られ方としても、中央集権的に大きな樹に集めるより、大きくはなくても、近くで信頼、安心できるものや情報が大切になるように思う。自分は自分なりにいいものを作ってきたし、これからも作っていきたい。だから、信頼できる人に託していきたいし、その関係を広げていきたいな。と思う。

今後とも、よろしくお願い申し上げます。
関係してくれている方、皆様に愛をこめて。

工房からの風

今週末は、いよいよ、工房からの風です。

http://www.kouboukaranokaze.jp

今年も、風人として、企画のお手伝いをさせて戴いています。

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いつも、災害や事故がある度に、イベントや展示の告知をためらう事があります。

台風は、範囲があまりに広すぎて、先が見えないのがすごく怖い。台湾でデモ隊が手製爆弾やカッターで人を傷つけ始めたニュースを聞いて、涙がでた。(武器を使い始めたら、本当に反撃されてしまう…)

東日本の地震の時もそうだったけど、あまりに自粛したりためらうのは違うと思っている。僕たちは、みんながいつもの幸せな暮らしを取り戻せることを信じているし、知る、調べる、動く、募金をする、など、出来る事はしているつもりだ。だから、みんなが安心を取り戻した時に世の中が静まり返っているより、華やかで、美しい世界で出迎えなくちゃいけないと思っている。

(その反面、仕事の手を止めて支援に行けるような人には、この上ない尊敬の念を持っています。)

僕たちは決して娯楽のための道具を作っているのではなくて、美しいものを美しいと感じたり、生きていてよかった、明日の喜びを見つけられるものを届けたいと思っている。非常時以外でも、悲しんでいる人がたくさんいる事も知っている。

だから、出来ることはしながら、馳せられる思いを馳せながら、いまよりもっと美しいと思えるものに触れられる世界を作って行きたいです。

日々懸命に、生きることに向かい合っている作家さん達の結晶のような展示会です。

そんな場所で、今年もお手伝い出来る事が本当に嬉しいです。

皆様のご来場、お待ちしております!

9月の予定

最近は、工芸→クラフトの流れについて調べようとしています。(というか評論を書いている)

工芸は産業や技術が土地と強く結びついている事や、団体展や百貨店など、支持体になるものが多いので、大衆化の流れが他の表現分野に比べて遅かったのかな。(というか、体制がしっかり残っている)と思ってるのだけれど、暮らし系ブームのようなものも少し一息ついて、潮目が変わるのだろう。という話があります。

美術にも文学にも、音楽にも演劇にも、ハイカルチャーになっていたものが堰を切って大衆に流れ出す瞬間があって、それが、雑誌の流行だったのかな、と思う。

他の分野の事例を見ると、掘り込んだ仕事をすると相対的にハイコンテクストになるので、クラスタの中で消費、生産している例も多いのだけれど、自分は山に閉じこもって仕事をするスタイルになりたくなかったので箒を作り始めたといっても良いくらいなので、上手い事、バランスを保った表現やフィールドにいたいと思う。

多分これから更に、作家性(というと雑すぎるんだけど)工芸観や歴史解釈や提案がソリッドに求められるのだと思っていて、こう思うんだよね〜という話も食傷気味なので、論拠に基づこうと思って評論を書いてみています。

(カテゴリとしての)工芸の起源とか、クラフトの発祥とか、そのあとのブームの構造とか、基本的な事も共通認識がない気がして、一部を除いて全部水モノになって無くなってしまうのでは…?という懸念もしています。
(民藝だけは、別格ですが)

結果、日本全国で個人戦になっていても仕方ないので、手を繋げる方とは手を繋いで、色んな人を肯定して、刺激し合って回していくのが一番建設的かなと思っています。

イベント目白押しです。
本当は、展示ひとつひとつ、レビューしていきたい。SNSとかに、思いや経緯、上げていくかと思います。

 

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「鴨々川ノスタルジア」
※ワークショップ+物販
日程:2019年9月14日(土)
時間:10:00~14:00
場所:新栄寺

かつての芸者さんの置屋だった場所の鴨々堂や、お寺などの文化施設を中心に、日本のもの、文化的なものをたくさん集めたイベントです。

札幌、古いものがないってみんないうんだけど、西東京生まれからしたら、文化的で羨ましいものが街に溢れているように思うんですよね・・・
ワークショップと、ちょろっと販売もあります。

 

 

国立、カゴアミドリさんでの展示会に、参加します。(21.22日は在廊します。)

「えらべる箒」展
日程:2019年9月17日(火)ー27日(日)
時間:10:30~17:00
場所:カゴアミドリ

実演、ワークショップ、トークイベントもあわせて企画中です。
詳細は、決まり次第 ブログ にてご案内いたします。

 

コハルアン(旧・神楽坂 暮らす。)

さんにて開催される展覧会に、吉田が参加します。

「静かなる手の仕事」
日程:2019年9月6日(金)ー29日(日)
時間:12:00-19:00(日曜|祝日|展示最終日は12:00-18:00)
定休日:月曜|火曜
場所:コハルアン(旧・神楽坂 暮らす。)

以下、コハルアンのHPより。

9月に行われる展覧会のお知らせです。
9/6から29までの約三週間、
小展示室では、企画展「静かなる手の仕事」を開催。
今回の展示では、素材と向き合いながら真摯に制作にいそしむ作り手の作品を通し、
生活の友となるような手仕事を探していただこうと考えております。
通期(9/6-29)でご紹介する作品とともに、
後半(9/19-29)からは、秋の晩酌にぴったりの器たちが新たに登場いたします。
秋の幕開け、街歩きが楽しくなってくるこの季節、
新しい暮らしを彩る手仕事を探しに、ぜひコハルアンまで。

2019/6/26

2019/6/26

告知しようと思ったら、すっかり6月も末になってきました・・・
オフグリッドしたくて、電気工事士試験を受けてみたり、最近は、共同幻想とか、ポストモダンについて毎日考えています(令和のこの時代に)
あんまりつぶやいたりしませんが、すごく元気だと思います。

7月は、東京と札幌、二つの展示会があります。

「編/組 三人展」
日程:2019年7月6日(土)ー14日(日)
時間:11:00~18:00(最終日16時)
場所:knulpAA gallery

「中津箒 展」
日程:2019年7月24日(水)ー28日(日)
時間:11:00~19:00(初日12時~)
◆7/24、27:ワークショップ
場所:Galleria Kukka

展示会2つ

告知しようと思ったら、すっかり6月も末になってきました・・・
オフグリッドしたくて、電気工事士試験を受けてみたり、最近は、共同幻想とか、ポストモダンについて毎日考えています(令和のこの時代に)
あんまりつぶやいたりしませんが、すごく元気だと思います。

7月は、東京と札幌、二つの展示会があります。

「編/組 三人展」
日程:2019年7月6日(土)ー14日(日)
時間:11:00~18:00(最終日16時)
場所:knulpAA gallery

 

「中津箒 展」
日程:2019年7月24日(水)ー28日(日)
時間:11:00~19:00(初日12時~)
◆7/24、27:ワークショップ
場所:Galleria Kukka

お知らせと、近況

2019/5/9

あまりブログを更新しないので、お知らせと、近況も併せて投稿するようにしています。再生エネルギーの為に、電気工事士2種の本を読んでみたりとか、建築の本を読んだりとか(ドゥーパの、ペチカを手作りできちゃうムックとか、トキメキの宝庫だった…!)していますが、とくに最近は、どこに出すでもないのですが短い論文を書こうと思って、資料を色々取り寄せたりしています。(特に、森仁史さんの『日本<工芸>の近代』は本当におもしろくて何度も借りている…いつか買いたい。ちょっと高い)工芸とか、クラフトとか、それなりにカテゴリにはなっていると思うんですが、あまり欲しい評論(エッセイはたくさんある)がなくて、歴史的な位置付けだとか、分野として骨格があるか、時代ごとにクサビを打って次への踏み台に出来るか、みたいな構造に不安(不満?)があって、色々調べてたり考えている次第です。

工芸というカテゴリが出来る明治までの史実じゃなくて、現在のギリギリの所まで、骨格を作ったり、先を示す批評や議論があってもいいんじゃないかなー、と、常々思っている。

クラフトも、現在の形の様になるまで文脈が幾つかあって辿ると面白いです。で、立ち位置を自覚して、次に行きたい。という議論を共有したい。という次第です。

このまま論文し始めそうなので、途中でやめておく

◇以下、展示・イベントのお知らせです!◇

こちらは、自身の展示ではないですが、アトリエで行われる、イマイカツミさんの展覧会!詳しくは、がたんごとんのブログ まで!

すごく真っ直ぐで、真剣で、美しいものを見つめる方です。

「初夏の色展」
日時:2019年5月23日(水)~28日(火)
時間:11時~18時(最終日17時まで)
場所:space koh(西東京市)

梶山友里 陶器
小林真夕 花の小物
坂本友希 テキスタイル
ササキサキコ イラスト
サニーサイド 農園のドライフルーツとグラノーラ
SHINTARO COFFEE コーヒー
吉田慎司 中津箒

こちらも、昨年に引き続き、少し出品させて戴いています。(糸を戴き、参考出品)


「武蔵國の籠と紙2」
日時:2019年5月15日(水)~20日(火)
時間:11時~18時(土曜のみ19時まで)
場所:space koh(西東京市)

ストイックな仕事を続けられるお二人です!

札幌蚤の市&札幌もみじ市
日程:2019年6月15日(土)、16日(日) 入場無料
時間:9:15~16:00
会場:JRA札幌競馬場
(北海道札幌市中央区北16条西16-1-1)

こちらは中津箒みんなででます…!いよいよ、札幌での開催。楽しみです。

などなど。毎日ぬか漬けとザワークラウトと、味噌汁とドブロク飲んでて、クレイジーな量の乳酸菌を摂っているので、あまり外食が続くと違和感を感じる身体になってしまった…!!健やかに、過ごしています。