2021/3/9

2021/3/9
ふつうの暮らしとファンタジー



テノナル工芸百職さんでの展示会、大きくピックアップ戴きまして、大変恐縮です。

物を売る事と、流行り廃りは避けられない関係にあります。
手仕事は近年、その恩恵も煽りも、多く影響を受けていたように思うのですが、その中で「ふつう」という言葉も多く使われ、消費されてきたように思います。

我々(と、勝手にまとめてしまいますが)としては、かつての暮らしの中に当然としてあったもの。
 そして、現在の生活において幸せに、心豊かに、社会や環境と調和するような道具を、日常の暮らしの中に取り入れる事を「ふつう」としているのだと思います。

ただ正直、後者の「ふつう」は一部理想、というか、言ってしまうとキレイ事みたいな所もあると思います。

 そもそも、美しい、というのは理想に近いという言葉なのだと思います。
作り手のみが触れられる美の世界というのは、サンクチュアリに近い感触があって、ファンタジー染みた面もあると思います。(それなのに、作り手は実際に手を伸ばして触れてしまえる所があまりに恐ろしいのだけれど)

 ネットなんかで「丁寧な暮らし」による強迫観念から離脱しよう!インスタントで何が悪い!というような動きもあって、そうですよね~、とも思っています。それはそう思います。

けれども、こう言った道具の作り手の皆さんは、そういうキレイ事を地で行ってしまう(行けてしまう)凄い人達で、実際に実現してしまう人達で、そこがかっこいい所だと思います。
 ただのノーマル、というよりは、理想像が多分に含まれていたから、流行になった所もあると思うんですよね。でも、夢も理想も描けなくなったら、そんなに寂しいことはない。人を人たらしめるのは、心の豊かさだと思うし、こういう営みの先に健康で文化的な生活があるのだと思うので、これからもガツガツ、真顔で夢を語っていこうと思います。

 そして、そんな夢を叶えてくれる展示会、本当に嬉しく思っています。

何卒、よろしくお願い申し上げます。

以下、テノナル工藝百職さんのインスタグラムよりー


#Repost
 @tenonaru_kougeihyakushoku


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Kitanocho, Chuo-ku










【3月の展覧会のお知らせ】



長文です。



フライヤーに載せた文章はとっても堅苦しくなっちゃいましたが要は感動したんです。



生きる上でもまだ油断ならない状況で、ものづくりを続けていくのも人によっては大変なわけで、それでも手仕事の力を信じてこつこつとやれることをやっていきたいという思いに心動かされました。












(展覧会フライヤー掲載文)





中津箒のつくり手の吉田慎司さんが、昨年8月に「ふつうの研究」というクラフト冊子を上梓された。



特に、最後の章の終わりの文章が、ものづくりの上での清清しい意思表明と一種のささやかな祈りのようなものを感じて印象的だった。





『イメージの固定化された振り子は、必ず揺り戻しが返ってくる。けれど、ニュートラルで、地域、歴史的に無理のない、普遍的な視点や価値観を得られるのであれば、それは時代や流行に踊らされることの無い、芯のある価値観になるのではないか。(中略)全てが歴史の中の誤差に過ぎないと、ニヒルに構える事は簡単ですが、一度きりの限られた人生の中、できる限り揺るぎない、変わらない、できればスパンの長い価値を作り、そのような場所に立脚したい。人の暮らしや生き方に光を照らす仕事がしたいと思います。そして、確かな手触りを頼りに進みながら「ふつう」の少し先の景色をのぞいてみたいと思っています。』                              ―吉田慎司「ふつうの研究」より抜粋





「ふつう」という言葉やイメージが流行りに乗せられたこともあった。



今ではひとくくりに集約するのは難しいと思われる「ふつう」という概念だが長い時間をかけて多くが蓄積され、風化や自然淘汰を繰り返す内に残るものを、もしかしたら「ふつう」と呼んでもいいのかもしれない。



今、様々な状況や環境が変わり揺らぎ、世界のどこにいたとしても大変なことがある中では、改めて揺るがない足もとや身近なものの存在の大切さにしみじみする。



落ち着かない世の風に吹かれているからこそ、手の中に収まるようなつつましやかなもの、腰を据え地に足の着いた仕事、自然との結びつきを感じさせる手仕事から受け取るものはきっと大きい。



今まで語られてきた「ふつう」から歩みを進め、ちょっと先にあるものもまた見えてくる気がする。



今回の展覧会は私が思う、身近な自然や地域、小さな規模の中でしっかりと根を張りすくすくとご自身のものづくりの樹を育んでいかれている三人のつくり手の皆さんによるものです。









3月の展覧会





ふつうの 少し先の 景色



2021/3/20(土) – 29(月)



12:00-18:00





金城 貴史|木の匙 
@kinosaji_kinjo


橋本 晶子|すず竹の籠、ざる 
@hashimotoakikoworks


吉田 慎司|中津箒 
@yoshida_shinji_




初日のみ事前予約制



会期中休 3/23(火)、24(水)



最終日3/29(月)のみ16:30終了





○初日のみ事前予約としていますが2日目以降も混雑が見込まれる場合は変更する可能性もあります(予約詳細は追って告知します)





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