うたうほうき

説明しすぎて野暮ったい感じ満載なのですが、そう言う人柄なのでUPしていきます。

 

大変写真では伝わり辛いのですが、3月1日より始まるヒナタノオトでの展示で、少し変わった物を出そうとしております。

箒の一つ一つに名前を付けると言う物です。

ここ数年、天然染料は使うものの、色をカラフルにしたり構成する事は出来るだけ避けてきました。道具の機能や存在を主体に置いて、視点が移るのを避ける為です。
それは技術の安定や、最適なサイズや型を探すと言う点でも大変効率的です。さらに近年、忙しくして戴いていたせいもあり、定番の物を反復して作る機会に恵まれました。一方、ルーティンに近づく危機感も少しずつ抱えていたのです。

勿論、職人としては真っ当な姿なのですが、大量生産の前身としての手仕事やプロダクトよりは一つ一つの品物に体験や味わい、慈しむ言葉を乗せたいと考える自分としては違和感の種にもなります。

これは、そこで新たに考えてみた試みです。
編む糸に、半ばランダムに糸を継いで、偶然性の高い模様を作る。その模様や佇まいに、名前を付ける作品群を試してみる事にしました。
手仕事に関してよく、世界に一つ、と言いますが、質の高い職人物は素人には見分けが全くつかない程の安定性を理想としています。(それはそれで素晴らしい事です、しかし)そこからの脱却と言う事が一つ。それから、編んだ箒やその構成に対してより抒情的に、思い入れを持って向かい合えると言う事を目的としています。
それは何より、自分が一番強く感じており、以前より色の合わせ方や微妙な形まで敏感になりました。

写真では、殆んど分からない様な色や混ぜ方になっているのですが…!
ヒナタノオトで、実際にお手にとって戴ければ幸いです。

 

おもしろいね。とか、変わってるね。とか言って気軽にみてもらえたら最適なのですが、
なかなか機会も無いので説明してみました。

 

 

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リアリティに関して  ―展示のお知らせ

展示のお知らせだけと言うのも味気ないので、思っている事など。

 最近、手仕事のリアリティと言う観点についてよく意識しています。

 

リアリティ=現実味、実感と言う意味です。

美術で言うリアリズムには写実的と言う意味があって、絵画や彫刻で言えばプロポーションが正確であるとか、描写が精細で調和がとれている作風を指したりします。

何故か印象派以降はあまり学校で習わないのですが、近代になってピカソの様に崩れたり、シュールなモチーフなどが現れます。こういう物にだって説得力、実感、正しさがあるじゃないか!と言う話になって、現実のコピーで無く、物事を抽象した物、喩えた物、変換した物に対してリアルだ。生々しい。などの形容が使われる様になったのだと思います。ただ、個人的にはもう少し、手仕事などにも幅広く適用の出来る考え方だと思っています。

リアリティ。人に実感を与え、生命の様に迫る共感。それはどうやって生まれるのか。空気や感覚の様に全く以て掴みどころのない物かとも思いますが、大まかなフレームは幾つかあると思われます。

物の持つ

1、物理的な役回り

2、意味的な役回り

物理的。道具であれば、切る、容れる、包む、守る。または鑑賞する、伝える、など。

意味的役回りとしては、それが内部に持つ印象、考え方、スタンス、示す物などです。

 

物理的な役回り、意味としての役回り両方が、受け手の生きる世界に即した形で提示された時、作物は受けての実感、リアリティに繋がる物として認識されます。

結局はチューニングの問題なので、桃山時代にしか必要のない機能や意味を持つ物もあるでしょうし、遠く海外のセレブにしか必要のない機能や意味を持つ物もあるでしょう。

 

そして、これら対象にひたと合致する適合性をリアリティを強度の問題とした時。その次には、どんな対象や世界に繋がろうとするかと言う、質の問題がある様に思います。

その質に関して、名前がついている訳ではないのですが恐らくそれは、多くの作り手やお店、ギャラリーの方は常に心に携えている物です。自分自身に関して言わせて貰えば、息の長い物が良いし、人や世界に優しい物、穏やかでシンプルな物が良い。

作る事に携わる人は、その視座をしっかりと固める為に色々考えなくてはならないし、作物をそのリアリティに近づけて行く為、弛まぬ努力と訓練をするのだと思います。

 

とは言っても、何の説明や知識も全く無く、多くを伝えるのはとても難しい事です。

お店の方なども、ぶれる事のない精確な感覚、隅々まで満ちる集中力を駆使して、仕事や関係を作り続けてくれている様に思います。

 

楽しみにしている展示が、幾つかあります。

 

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「きれいに暮らす-春の道具展-」
手しごとの器・道具 テノナル工藝百職

2014/2/20(木)-3/9(日)11:00-18:00

※3/1(土)、2(日)の営業時間は13:00-18:00となります
※3/9(日)の営業時間は11:00-17:00となります
◎企画展準備のため2/17(月)-19(水)がお休み、片づけのため3/10(月)がお休みとなります
◎企画展期間中のお休みは2/26(水)、3/5(水)、3/8(土)です

 

「安齋 新・厚子 陶磁 | 勢司恵美 竹 | 吉田慎司 箒 作品展」
■ヒナタノオト

3/1(土)〜12(水)12:00〜19:00(土日祝 18:00まで)
木曜休み・最終日16:00まで

よろしくお願い致します。