寄稿・朝日新聞

本日の朝日新聞・北海道版の「北の文化」欄に寄稿させて戴きました!

取材は何度かありますが、寄稿は初めてですね!いま一番伝えたい事を好きに書かせてもらっとても嬉しかったです。

まとめると、日常の些細な暮らしの中に最も豊かな事、詩情があるのでは。という話です。

2019/3/9 朝日新聞「北の文化」

「生きているということ

いま生きているということ

それはのどがかわくということ

木漏れ日がまぶしいということ

ふっと或るメロディを思い出すということ」

これは、谷川俊太郎さんの有名な詩『生きる』の冒頭です。人にとって「生きる」とは単純に生命を維持するだけではなく、身体で感じ、心を動かし、人や世界との関係を深めるための詩情を携えていくことだと考えています。

現在私は、「生きるための道具と詩歌」をコンセプトにした札幌の店舗『がたんごとん』内にアトリエを構え、株式会社まちづくり山上の社員として中津箒(なかつほうき)という箒を制作している職人です。お店には、箒を始めとした手仕事の品々と、詩歌を中心とした本が並んでいます。美術大学を出て、箒を作り、詩歌の本に囲まれて…というと風変わりに見られがちですが、元来日本の美術と美意識の根底には素朴な生き方に籠められた詩情というものが、流れています。

万葉集の時代の貴族は、苫の庵(とまのいおり)といって貧しく慎ましい住処を味わい深い物として詠みこんでいます。シンプルに削ぎ落とされた事物に世界を凝縮し、奥行きを見出す考え方は、茶道でいえば侘び寂びであったり、仏教でいえば多即一などがあり、例を挙げればキリがありません。その中でも意味や味わいを結晶化したものの代表として、俳句、短歌、川柳などの短詩系があります。遡れば古代から続く歌謡は、政治、伝記、恋、遊び、あらゆるものを包括しながら、現代まで息づいてきました。ネットや印刷の発達もあり、若い人が革新的な活動を多く展開していることは、その詩形の生命力と可能性の証明といえます。

シンプルに洗練された物を深く味わい、その向こうに思想や美しさの広がりを感じる、ということは道具や工芸の世界でも同じです。例えば、私の作る箒は古くからの庶民の道具でありながら、「払う・清める・整える・慈しむ」など様々な思いを形にしてくれる道具です。掃除の心地よさ、物や家族を大切にする心は英語でcleaningと言っても、表現しきれない味わいがあります。食べ物を「戴く」という気持ちも、eat 以上の感謝や謙遜があり、「繕う」という事もfix以上に、心や物の在り方を整えてくれるような趣きがあります(もちろん、英語圏には英語圏の美しさがあるのですが)。誰に教わらずとも、素朴な暮らしの中にある美しさ私達は身体の中に持っています。またそれらは、いま必要とされる生き方でもあります。言葉も物も、大量に作られ、使い捨てられる時代。それらが、たくさんの歪みや悲しみを生んでいる事にも誰もが気がついている時代だからこそ、こんな仕事をしたり、残し、伝えていく人がいても良いのかな、と思っています。世界は元より日本にも、明日食べるものにも困る人や、衣食住はあっても、大変な窮地に立たされている人はたくさんいます。だからこそ、生きるとは何か、豊かさとはどこにあるのか、考え、感じ、実践し、その輪を広げていくような仕事をしたいと思っています。

アサココ


朝日新聞、多摩地域の折込タウン紙 アサココに掲載していただいてます!今日。
先日の、pooolでの展示の様子です。
みなさま、大変良くして戴きまして・・・ありがとうございます。
pooolでは、また9月にグループ展があります。

年の瀬

 引っ越してから最初の冬ですが、火鉢を焚いたり炬燵に入ったり、餅を焼いたり窓に防寒を施してみたり。
嗜好に任せて、大いに冬を楽しんでおります。
来年の上海のショップへの仕込みや、ギフトショーの準備や、注文の消化など、ぱたぱた。
直近の販売などは、2月になりそうです。
最近、突風の様に幾つも取材のご依頼を戴きまして
1月5日のソトコト
1月25日のクウネル
3月3日の自休自足
などなど掲載予定。中津箒全体として出ておりまして、とても有り難いです。
 取材やお店の方など、工房からの風をきっかけに幾つも戴いておりまして。
初日は大変な嵐でしたが、とても素敵なイベントでした。先日のWSもとても濃い内容で
やらせて戴き。お礼のお手紙まで貰ってしまい。
 日々感謝。皆様の思いやりで呼吸をしております。
 民藝館も、出品をきっかけに素敵な方に多くお会い出来まして。
みんなきらきらしてるんですよね・・・眩しい
 作る事だけでなく、それでもって伝えるのが仕事だと心得ておりますので、共感して戴ける方に
扱って戴ける、観て戴けるのは正に本望と言った所です。
 そうやって、どうやって多くの人に伝えるか、変えていけるか。そう言う事ばかり考えております。
 恐れ多くも何か表現しようと言うのは、自分の意見を納得させる事で。更に向上心を持つと言う事は、
可能な限りどこまでも多くの人を変えてしまおうとする事で。夏目漱石は何らかの形での勧善懲悪をしなければ
ならないと言っておりますが、やっぱり、たくさんの人に伝えたい。変えてしまいたい。と思ったら、
誰に言われてもこれは素晴らしい事です!善い事です!って言えないといけない筈で。
 逆に言えば、誰にも必要な、素晴らしい事だと思っていたら、閉じ込めて置くのはあまりに勿体無い。やっぱり、可能な限り多くの人を変えてしまおうとするのが本当だなと・・・。
 そう言う2つの循環で動いております。夏目漱石は好きです。
 まぁ、どんなお仕事でも人に繋がらない事も、人や社会に影響を与えない事も無いので、誰にも言える事ですが。
折角やるなら主体的に、迷いなく歩みたいものです。
 
一年が終わっていくと言うのは清々しいですね。
本当に、たくさんの方にお世話になりました。来年も、変わらぬお付き合いを。