洋食器を楽しむ本

仕事柄、器や道具に触れる機会は多いのですが、背景や成り立ちについて、あまりに知らないので手に取ってみました。ロイヤルドルトンやウェッジウッドの日本のマーケティング部長をやられている方の本。詳細な資料というよりは、簡単に洋食器の全体像や意味を知るのにとても良い本だと思います

■洋食器も良いなぁと思いました。

周囲には、手の跡のある、バラ売りの、プロダクトとは真逆を行く仕事が多いので、何だか触れる前に避けてしまっている自分がいました。ところが、この本の作者の方の深い愛情を交えて、成り立ちを聞いてしまうと、変に距離を置くのも勿体無いなぁと思ってしまいます。

歴史に関しては、如何にヨーロッパやイギリスの人たちが磁器に憧れ、国家を挙げて、しのぎを削って磁器をつくるに至ったか。どのような経緯で有名窯が生まれ、パターンを発展させ、現代まで愛されるに至ったか。などを一通り見渡しています。

中でも、イギリスでどの様に食器が買われていたか、などの体験談は興味深い内容でした。ディナーセットを買うのは、結婚する時、または子どもが出ていく時など、二回タイミングがあるそうで、どのブランドにするか、長い時間付き合うものなので、じっくりと吟味するそうです。クリスマス、誕生日、特別な日にティーカップのセットを出すのなども習慣になっているそうで、とても思い入れの深い物である事が伺えました。

特に、現在の日本の食卓は多国籍ですが、やはり最適化された洋食が並ぶ景色は、全く印象が変わるそうで、とにかく、実際に盛って、食べてみないと分からないという事が何度も言及されていて、これだけ好きで詳しい方が言うのだから、そうなのだと思います。

こういう、現実的な洋食器には、まだ殆ど触れた事が無いなぁと、思いました。
パターンにも、意味や成り立ちがあるので、知ると数段楽しくなります。

■クラフトとカップ考

コーヒーが好きで、しばしばカップを手に取ります。おしゃれな物、でも持ちづらい物もある。手の大きさなどは人それぞれなので、しっくり来るものはなかなか見つかり辛いのではないか。と、思っていましたが、やはりシェイプに関しては一番気を使うのがカップだそう。また、他の皿類は、日本と違って基本的には持ち上げません。

ちょっと、いま家にあるカップ諸々に関しても。色々見直してしまいました。
周りに詳しそうな方が多いのですが、自分は知らない(意識していなかった)事も多かったので、恐れ多くも記述していきます。

セットで使われる、正式なカップはティーカップかコーヒーカップ。(どちらも、中世などではわざわざ船で運んで来た。大変な嗜好品ですね。)日本に入ったのは、1980年頃、カップが最初だそうです。寧ろそれまで湯呑みだったんですね

・ティーカップとコーヒーカップ

ティーに関しては、全く温度を下げない抽出法になるので、早めに飲める温度になる様、口は広くなるそう。重さが出る為、高さは低くなる。用途で考えれば、上が広く、中が少しすぼみ、また広がる形がベストであると明言されています。(くびれをウエスト、その下の膨らみをヒップ、高台をスカートと言うのにも、とても愛着を感じます)

ソーサーは、かつて熱い紅茶をさます為に移して飲む物として使っていう言い伝えもある。とあります。
それに対して、温度に変化が少ない方が良いコーヒーは、少し高めの円柱の形になる。理にかなっていますね。

・取っ手

取っ手がついたのは18世紀終わり頃で、それまでは湯呑み型だったそう。そしてこれは定かではないそうですが、取っ手は指を入れるものでは無く、つまむものだろうと本書の中では言っています。マグカップの様なものは、取っ手を掴む。重たいし、何でもありで、がちゃがちゃと使う庶民の器。これも定かではないそうだけれど、中国を模倣しようと追いかけてきた歴史とは別に、庶民の間で作られていたのではと言っています。その他、もっと重たくなるので取っ手のないカフェオレボール(向こうではモーニングカップと言うそう)など、あとは、大抵メジャーでないコレクションアイテムだろうという事です。
何故あんなに収納し辛くて、不安定なものを付けるのだろう、寿司屋さんみたいに分厚い湯呑みで良いじゃないかとも思っていましたが、やはり優美さや、付加価値として後から開発されたのだなぁと解釈しました。

・身の回りのカップ
クラフト界隈に関していえば、ここまで述べた様な物がミックスされている印象を受けます。勿論、当時の様に中国磁器を追いかけている訳でもないので陶器も多く、つまめる様に軽い取っ手付きカップもあまりみないかなぁと思います。マグの様に掴みながら、(指の数もまちまち、空間が大きく空いていて、敢えて無視した様な物もありますが)でもジャンクに使うでもない、一点物の陶器。などと言うと、西洋から見れば、かなり特異な文化なのだと思います。

ただ、優雅さや熱さを避けるという意味でも、重さがある点でも取っ手は使いやすい方がやはり良い。薄く軽い磁器を敢えて作らないで取り入れているのだから、その点は敏感になって良い物と思います。
また、手作りの器で豊かな時間を過ごすという意味でも、テーブルや敷物をシミから守るという点でも、ソーサー付きに越した事はないのではないかと思っています。マグの様に扱う事を、ジャンクな事とするべきか、庶民的な道具としてポジティブに捉えるべきかは、使い手、作り手、共に検討していって良い問題だと思います。

この本の中でも、フルセットは美しいけれども、単品で使う事も提案しています。昔から、実家にあった(結婚式か何かでもらったのか)洋食器に、少し違和感を感じていたのですが、やはり食文化も、建物(向こうは、場合によっては百年前の古びたカフェだったりするわけで)も違うので、洋食器を取り入れるにしろ、何かしら変形した形で使うのが全う、寧ろ、様々に文化を取り込んで来た日本式なのかなと思います。

一つ一つの手作りや愛着を味わう。というのも、貴族文化からのフルディナーセットとは全く別の味わい方で、そういった心持ちが一般の中にある、というのはとても豊かなのだろうと感じました。

18、19日。 工房からの風、ワークショップ

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ワークショップ用の看板を作っています。自分が出展した時のパネルからトレース

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も、風人という肩書でお手伝い(ワークショップなど!)で参加させて戴きます。

個人的に、とてもとてもお薦めしたいイベントなので皆様ぜひご来場ください。
私自身というよりは、この動き全体を見に来て戴けると、何より幸いの次第・・・(正に風人)

 

サポート、盛り上げ役という事で、恐れながらプロモーションさせて下さい。

最近は、クラフトのイベントなどが盛り上がっていて無数にある訳ですが、その中でも、強い場のある点が、圧倒的に違う所だなと、個人的には思っています。

場、とは、そこにいる人に共通してある空間がある事だと思います。出展者はとても幅広い。とは言え、厳しい選考を通って、ミーティングを重ね、工房からの風を目指そう。と、準備をしてきた皆ですので、強い連帯感や仲間意識が自然と生まれている様に思います。

しかも、その場の力がとても強い。強さは、持ち合わせたものや、取り繕ったり、無理やり寄せ集めた様な強さではなくて、時間をかけて結晶の様に積み重ねてきた、安定感して根を張った物の様に思います。それは、ここに関わる人達が実際にコツコツと積み重ねてきた時間の重みでもあるし、明快な意志や愛情の厚みでもある事。それに、そういった思い、細かな行動、個々の企画や言葉が有機的に繋がって、1つの曇りない空間になっている様に感じています。

一言でいうと、とにかくみんな真っ直ぐなんです。という風にも言えてしまう気がするのですが、その真っ直ぐさ、透明感たるや、そうは見られない物と思っております。(抽象的な言い方ばかりですが・・・色や匂いは、見るのが一番速いですね)

私共、ある点では浮草のような面もあるもので、こうやって、強く、ブレず、深く、変わらずに向かい合ってくれる人や場所があるというのはとても心強い事で・・・当日、お客さんや、熱いファンの方がたくさんいらっしゃるのですが、そういう芯のある空気が伝わっているのかな。と、勝手に思っています。
特に、目指している先や方向も、本当にものづくりの形や暮らしの在り方を思って、常に頭を捻っている様に思います。単純に、ふらふら~っと見に来てくれても綺麗でとても楽しいのですが、深く掘っても、長く噛んでも、どんどん味の出てくるイベントと存じます。

最後になりましたが、自分が良いなぁと思う動きに携われる事は、何より嬉しい事です。
お天気は、きっと良さそうですね。皆様、晴れやかな会場でお待ちしております。

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2014年 第12回 工房からの風

日時:2014/10/18(土)・19(日) 10:00~16:30
会場:ニッケコルトンプラザ屋外会場

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