ケの暮らし賛歌「一汁一菜でよいという提案」

最近ばたばたして、なかなか本も読めなかったのだけれど、久しぶりに良い本だつた!これは、周囲の人にお勧めしたい。
基本的に、書いてある事はタイトルの通り、一汁一菜でよい。という提案でしかないけれど、その中に和食、日本人の美しい暮らし方や忘れてきたもの、健康、文化あらゆるものに思いを巡らせた上での、一汁一菜の提案だと分かる。
そこまで主張して書いていないけれど、現代の食事、即ち生き方、考え方が過剰で、表面的になっている事の批判でもある。今の様に総菜や食材が溢れたのは最近の事で、日本人は、ご飯と、汁物、漬物で暮らしてきた。一汁一菜で良い。同じ汁物でも、季節によって種類も変わる。それに、味噌は本当に健康によく、素晴らしい食材で、ハレとケの、ケの食事に手間は必要ない。という話だった。時短とか、手抜きとか、スピード調理というとは真逆で、そもそも、質素である事の慎ましさ、美しさ、そして、ハレとケのけじめがつく事で、心身ともに健やかに暮らせる。という、自身の実践と哲学を凝縮したような話だった。

無理して、おかずを何品も作ったり買ってくるならば、季節の土地の物をいくつか買ってきて、季節を感じ、味わい、家族と共有する事が大切なのだ。と、当たり前だったはずの事を教えてくれる。
一流の料理人の本だと思って読み始めると、びっくりするような事もたくさん書いてある。味噌汁には何でも入れて良い。パンやベーコンも入れている。秋は、シーズンの間は毎日秋刀魚でも良い。とか書いてある。そのくらい、家庭で、季節やその場にあるもので、無理なく食事を味わう事を大切にしている。和食のが世界遺産なら、料理人ではなく、家庭の主婦やおばあちゃんにスポットを当てるべきだ。とすら書いてある。料亭はハレの場所。家庭の、ケの重要さそして、日本人は縄文の頃から積み重ねてきた感性を、こんこんと説いた本でした。
後半に幾らか、具体的なレシピ例や、器の楽しみ方も書いてあります。