〈生命〉とは何だろうか――表現する生物学、思考する芸術

タイトルの通り、生命とは何か、という事について記述している本です。それを探る為に学問(具体的には生物学)、芸術というアプローチがあるという話で、岩崎さん本人の周囲の具体例(研究者であり、アーティストの方です)を示しながら説明した本です。

学問と芸術は同じ場所を目指しているはずだ。という自論(と言っても歴史を辿れば自明の事だと思っているのですが)があったので、ふむふむ、と、納得しながら読んだ次第。生物学の最先端の話も、噛み砕いて説明してくれているので、とても面白く読みました。
宗教、学問、芸術どれも、人間や生命とは何なのか、人はどうあるべきか、という事を只管に考え続けているものと思います。

生物学の歴史や、先端の話を読んで行くと、生命を解明する際に倫理や解釈という事が不可欠になって来て、そこにアプローチ出来るのは芸術であろう。海外の例なども含めて説明しています。

生命の基本単位を細胞とした時、細胞そのものを作ろうとするボトムアップの方法と、幾つかの既存の物を組み合わせて生命を作るプラモデル方式があるという話もありました。

単純に研究や作品の発表というと、発見や表現が着地点になりますが、本来のあるべき着地点は、人の日常に還元されてこそ。と思っています。新しい発見は、薬品や具体的な制度までまとめ上げ、人の命や幸せに貢献してこそと思うし、表現は、より多くの人に伝え、社会がより良く動いた時に、初めて結果として成立するのだと思います。

恐らく、これは自分のような仕事にも言える事です。生命とは何か。という目標は、自分の中では、人はどう生きるべきか。具体的には、どう暮らしと向き合うか。という事でした。
手仕事の道具を購入したり、在り方使い方を吟味して生きていく事はプラモデル式、確かな素材を使い、より良い手仕事を創って行くことは、ボトムアップ式になると思います。素晴らしい研究は、多くの人に共有される様に、より良い手仕事や暮らしのありかたを、より多くの人と感じて行きたい。
勿論、答えはたくさんあるものだけれど、少しでも、考え、感じ、共有していく世界は、人を幸せに向かわせる物と信じています。

よく、洋服やカバンを縫ってみたり、パンを焼いてみたりしていて、作るの好きなんだね。なんて言われますがピンと来ない。作る快楽はあまり無くて、探究心が強いと思っています。正に、ボトムアップ式に暮らしを考えようと色々昔の事やアナログな事を解体して、実践しているのだと気づきました。今度から、そう聞かれたらこの本の話を借りて説明しようと思います。

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