判断力批判

カントの、純粋理性批判、実践理性批判に続く、三批判書と言われる三冊の最後の本になります。

人が美的判断をする時、どのような意識や判断力を用いているのか。それらは何に起因するのかなどを徹底的に解説した本です。

 

個人的に関心のある点だけついばむと

・本人にとって感覚的満足を快適、快い物が美、客観的価値の認められる物が善となる。

・美とは概念を用いずに普遍的適意の対象として表象されるところのもので、それは個人的な感覚でなく普遍妥当的判断である。

・理想は、道徳的な理念など、理性による善とから生まれる物であるので、理想的な美と言う物はあり得ない。

・崇高とは、他と比較して、如何なる感官をも超越する心を示す物である。

・快は分量によってしか説明され得ないが、美は性質を必要とする。

などがありました。

 

この他、詩や音楽、自然など、あらゆる美学的な判断を解説しています。

大半は、それらの根拠や厳格な説明についてページが費やされていて、徹底的な論考がつまっているので、とても一言にまとめる事などは出来ない内容になっています。

 

ただ、この中で基本の基本となっている、快感と、美と、善は異なると言う点は、日々考えていた、または問題として抱えていた点です。

 

カントは只管に、緻密に、判断力を分析していくのみで快と善のどちらが上位であるとか、どうすべきなどの主観的な感情や方向性などを排除しています。

勿論、哲学や論理に対して最も忠実であろうとすればそうなるとは思うのですが。

やはり個人的、感情的には、只管安楽を求める暮らしよりも向上心や正しい事に向かう生き方でありたい。美や善が、誰にも美や善と認識される世界であって欲しい。

これは恐るべき事に18世紀の本なので、宗教や体制の大きな違いがあって現代とは違う訳ですが、ポストモダニズム、資本主義民主主義の浸透しきった我々の暮らしでは、鑑賞者各々が抱える判断力の責任がとても大きい。美と善の判断が出来ず、ただ快感だけが消費され、美や善が淘汰されていくのではと、日々懸念しています。

「判断力批判」への2件のフィードバック

  1. カントの哲学を解説書なしで読むことが大事だと思います 私はその道のプロではありませんが勇気と希望のあふれた書で愛読書です

    1. ありがとうございます!ロジカルなので、けっこう読みやすいですよね。やはり、名著だと思います。

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