資本論綱要

資本論の草稿やエンゲルスによるまとめなどが記載された本です。昭和28年初版の岩波文庫を読みました。
原書を読んだ人が研究用に読む本なのかも知れませんが、短くまとめてあるので入りやすい本ではあります。

勿論、共産党宣言ではないので、資本の仕組みがひたすらに記述されています。
資本家に労働者が酷い搾取を受ける中、エンゲルスの助けを受け、逃げながら、命懸けで資本論を書き上げた事は知っていましたが、それにしては何が悪でこうするべき。などという直接的な主張は殆どない論調だと思います。
繰り返し主張される事は、商品にはその元々の価値以上に剰余の利益を付ける為に値段が上乗せされている事。資本家はその剰余価値をつくる為、労働者を出来るだけ長く働かせようとする事、などです。また、その剰余を作らずに資本主義は成立しない。

現在の社会で考えると、所謂ブラックな経営者の形だと思います。(余分に働けばその分の収入、生産性が上がればそのぶん労働者に見返りがあるのが順当だという事自体は、我々は認識しています。)
今はないがしろにされがちですが、こういった意識が浸透しているのは、彼らの頑張りのお陰もあるのだろうと思いました。

また、これも慣れてしまったせいで当然と思っていますが、自身で作った物でも、利益が出る様に常に上乗せした価格を設定しますね。仕事であれば当然ですが、そこの利幅には何の根拠も無い。時給換算する事もありますが、物の価値と賃金は何の関係も無い。
恐らく、生活にかかるお金から逆算された値や、その周囲の相場から算出された物です。
この本の中でも、剰余価値は資本主義と切り離せない物で、それが良いとも悪いとも言っていません。
ただ、普段の自分の仕事は、他の人の時間を代わりに費やしているからその時給分を貰っているとは思いません。時間や、生産コストも含め、それ以上(または以外の)価値と向き合っている様に思う。貨幣を使って暮らしている以上、切り離せない話だとは思いました。

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